これまでに同定されているチオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT)バリアントアレル23種類について、遺伝子多型が酵素機能に与える影響をin vitroで検証した。まず、ヒト肝cDNAライブラリーを鋳型として、野生型(TPMT*1)及びバリアントCYP2B6発現クローン(TPMT*2~*24)を作製した。野生型及びバリアントTPMTをCOS-7細胞で発現させ、TPMTの特異的な基質である6-チオグアニンをin vitro代謝させ、その代謝物をHPLC-蛍光検出器で定量し、各バリアント酵素のキネティックパラメータ(Km、Vmax、CLint)を算出した。その結果、23種類のバリアント型TPMT発現用クローンを作製し、COS-7細胞中にTPMTタンパク質を発現させることができた。野生型であるTPMT*1と発現量を比較したところ、TPMT*2、*3A、*5、*12、*14、*18、*22及び*23で有意なタンパク質発現量の減少が認められた。TPMT*3A、*3B、*5、*14、*18、*21及び*22の酵素活性は検出限界以下となった。また、野生型及びその他のバリアントではMichaelis-Mentenの式に従うことが示された。本研究は、6-メルカプトプリン等のチオプリン系薬物の代謝酵素であるTPMTについて、アミノ酸置換を伴うTPMT遺伝子多型が酵素活性に与える影響を検証したものであり、新たに酵素活性の低下を引き起こすバリアントアレルも明らかにした。今回得られた基礎的情報は、TPMT遺伝子多型情報をチオプリン系薬物投与患者の選択指標として利用するために有用なものであると考えられ、今後、患者個々の遺伝子タイプを考慮した有効且つ安全な個別化薬物療法の推進へ貢献することが期待される。
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