研究概要 |
薬剤性肝障害発症過程におけるTh1/Th2反応の役割を明らかにするため、薬剤性肝障害モデルを構築し、肝障害指標に加えて、肝障害発症に伴うTh1/Th2反応の推移についてサイトカインを指標に検討した。一般に、C57BL/6系はTh1優位、またBALB/c系はTh2優位な系統であり、寄生虫感染やエンドトキシンなどに対する反応性が大きく異なる。この2系統でアセトアミノフェン誘発肝障害を比較したところ、BALB/cに比べてC57BL/6系マウスで有意に高い感受性を示した。両系統では反応性代謝物の生成酵素であるCYP2E1含量には差がなく、生体高分子への共有結合の指標となる肝臓内グルタチオンの消費にも系統差は認められなかった。このことから肝障害感受性の差は薬物代謝によるものではなく、肝障害進展における炎症反応による可能性が考えられた。今回、Th1/Th2バランスの指標となるだけでなく、肝障害進展や逆に抑制に寄与すると考えられるTNF-αとIL-6の肝発現量をReal time RT-PCRで測定した。その結果、アセトアミノフェン肝障害に対し,て高い感受性を示したC57BL/6マウスでは、肝障害発症に伴いTNF-αが高い発現量を示し、肝障害抵抗性を示したBALB/cマウスではIL-6が高い発現量を示した。このことはTNF-α/IL-6発現比そのものが肝障害感受性を左右していること、すなわち、Th1/Th2バランスのTh1への偏向が、肝障害の重症化に寄与することが示唆された。本結果はこれまでの薬剤性肝障害とサイトカインの関連に関する知見を説明するとともに、Th1抑制薬による肝障害防御の可能性を示唆している。
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