研究課題
本研究は、胎盤関門の異物認識の分子基盤となるトランスポータータンパク質複合体の解明および妊娠経過に伴うその制御因子、発現及び機能変動の解明し、妊娠時薬物療法の安全性の確立に寄与することを目的としている。本年度は、臨床で用いられるシタラビンやテオフィリン等、13種の種種薬物について胎児および胎盤の成熟に重要な生理的基質の取りこみに対する阻害実験を行い、IC50値を算出した。さらに、ヌクレオシド薬物であるジダノシンとジドブジン(AZT)の胎盤関門への取りこみ機構を明らかにした。特にジドブジンについては、ステロイドホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン硫酸(DHEAS)により、その取りこみが促進されることを発見した。速度論的な解析を行ったところ、DHEASがAZT取りこみのKm値を低下させ、トランスポーターに対する基質の親和性を上昇させることで、AZTの取り込みクリアランスが上昇することが明らかとなった。トランスポータータンパク質の発現および細胞内局在性制御メカニズムについて、血液胎盤関門の細胞膜に局在するERMタンパク質であるエズリンに着目した。妊娠マウスに心不全治療薬のジゴキシンを静脈内投与し胎児移行性を検討したところ、エズリンノックアウトマウスにおいて、上昇傾向が示された。ジゴキシンはABCトランスポーターのP-糖タンパク質の基質であることから、エズリンがP-糖タンパク質と相互作用する可能性が示された。薬物排泄の肝・腎振り分けにABCトランスポーターファミリーに属するMRP2やBCRPによる分子認識が重要な役割を果たすことが明らかとなった。これらトランスポーターは胎盤関門にも発現することから胎盤においても同様のメカニズムが働く可能性が考えられた。
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