研究課題
本研究は、胎盤関門の異物認識を担うトランスポータータンパク質複合体の制御因子としてエズリンの役割を解明することを目的として研究を行ってきた。昨年度までにエズリンをホモ欠損するマウスの胎盤組織中及び胎児血のヒポタウリン濃度が顕著に低下することを明らかにしてきた。本研究計画の最終年度となる本年度は、胎盤関門のヒポタウリン輸送に関与する分子実体を明らかにするため、ラット胎盤刷子縁膜ベシクルを用いてポタウリン取り込みを解析した。その結果、ヒポタウリン取り込みはNa+およびCl-を駆動力とし、Km値は4.4μM、0.1mM GABAおよび2mMタウリン存在下で顕著に阻害される一方、0.1mMタウリンおよび2mMベタインでは阻害されないことからGABAトランスポーターのSlc6a13との類似性が示唆された。そこでマウスSlc6a13遺伝子を一過性に発現させたHEK293細胞を用いて解析を行ったところ、Slc6a13のヒポタウリン取り込みは、Km値が10μM、0.1mM GABAおよび2mMタウリンで顕著に阻害されたが0.1mMタウリンおよび2mMベタインでは阻害されなかった。RT-PCRおよびウエスタンブロット解析の結果、ラットおよびマウス胎盤にSlc6a13のmRNAおよびタンパク質の発現が確認された。マウス胎盤刷子縁膜ベシクルについて抗エズリン抗体を用いた免疫沈降を行ったところ、エズリンとの共沈物にSlc6a13が確認され、Slc6a13とエズリンとの相互作用が明らかとなった。さらに、HEK293細胞にSlc6a13とエズリンを共発現させた結果、Slc6a13によるヒポタウリン取り込み活性が有意に上昇した。これらのことから、エズリンは血液胎盤関門を構成する合胞体性栄養膜細胞の母体血側細胞膜の裏打ちタンパク質として発現し、Slc6a13を母体血側細胞膜に局在化させ機能調節因子として働くことが示された。血液胎盤関門にエズリンとSlc6a13がトランスポーター複合体を形成することは、抗酸化作用を有するヒポタウリンを母体から胎盤内および胎児に供給することで酸化ストレスから胎児を保護している可能性が考えられた。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)
Biol Pharm Bull
巻: 33 ページ: 1400-1406
Drug Metab Diepae
巻: 38 ページ: 1576-1581
Placenta
巻: 31 ページ: 1003-1009
http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/bu/yaku/
http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/lab/byouin.html