胆汁酸の代謝活性中間体を経るグルタチオン(GSH)並びにN-アセチルシステイン(NAC)抱合体の生成と胆汁排泄、さらには胆汁酸のNAC抱合体をプロドラッグとして開発することを目的として、本年度は以下の研究を行った。初めに、標品としてα-、β-、ω-ムリコール酸(MCA)、ヒオコール酸(HCA)、ヒオデオキシコール酸のGSH抱合体を有機化学的手法を駆使して合成し、これらと先に合成したヒト主要胆汁酸5種のGSH抱合体を指標として、ラット胆汁中GSH抱合型胆汁酸をLC/ESI-MS/MSによって探索し、ω-MCA、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸及び12-オキソリトコール酸がGSH抱合体として排泄されていることを明らかにした。引き続き、化学合成した重水素標識NACを、5種のヒト主要胆汁酸を経口投与したラットに腹腔内投与すると、これら胆汁酸がいずれも重水素標識NAC抱合体として胆汁中に排泄されることを明らかにし、胆汁酸が肝で代謝活性化された後、NACによって直接抱合を受けることを実証した。さらに、重水素標識ウルソデオキシコール酸のNAC抱合体(UDCA-NAC)をラットに静脈内投与したところ、UDCA-NACが体内で速やかに加水分解を受けてUDCAを遊離してグリシン及びタウリン抱合体に変換されるばかりか、UDCA-NACがラット肝サイトゾール画分で硫酸抱合を受けることも明らかにした。今回得られた知見は、UDCA-NACを注射剤として開発してゆく上での重要な礎になるものと思われる。
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