研究概要 |
【目的】現在までに我が国では、関節リウマチ等を対象として3種類のTNF阻害薬(Infliximab,Adalimuma,Etanercept)が承認されており、これらの医薬品の使い分けが臨床現場での新たな課題となっている。本研究では、これらTNF阻害薬のPK/PDを考える上で重要な情報となるFc受容体との相互作用特性に着目し、その差異を明らかにすることを目的とした。 【方法】TNF阻害薬とFc受容体(FcRnおよびFcγRI)との結合親和性を表面プラズモン共鳴法により解析した。 【結果と考察】TNF受容体と抗体Fcドメインの融合タンパク質医薬品であるEtanerceptと、抗体医薬品であるInfliximab,AdalimumabはいずれもIgG1由来のFcドメインを有しており、Fcドメインの一次構造はアロタイプの相違による2アミノ酸を除いて共通である。しかし、EtanerceptではFcRnとの結合親和性が低いことが明らかとなり、FcRn結合部位(CH2-CH3間付近)の高次構造がFc融合タンパク質と抗体医薬品で異なっている可能性が考えられた。一方、FcγRIとの結合親和性は3種のTNF阻害薬間でほぼ差がなく、FcγRI結合部位(ヒンジ領域付近)の高次構造は類似していると考えられた。また、TNF阻害薬に結合標的であるTNFαを添加した場合に、特に抗体医薬品においてFcRnとの結合センサーグラムの形状が大きく変化した。これらの結果から、1)TNF阻害薬のFcドメインとFcRnとの結合親和性にFcドメイン以外の構造が影響を与えていること、2)TNFαとの結合に依存してTNF阻害薬のFcRnとの結合特性が変化し、体内動態が変化する可能性があることが示唆された。
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