研究概要 |
【目的】現在までに関節リウマチ等を対象として世界では5種類、我が国ではこのうち3種類のTNF阻害薬が承認されており、これらの医薬品の使い分けが臨床現場での新たな課題となっている。本研究では、これらTNF阻害薬のPK/PDを考える上で重要な情報となるFc受容体との相互作用特性に着目し、その差異を明らかにすることを目的とする。 【方法】TNF阻害薬とFc受容体との結合親和性を表面プラズモン共鳴法により解析した。 【結果と考察】昨年度までに、抗TNFα抗体(Infliximab, Adalimumab)とTNF受容体Fcドメイン融合タンパク質医薬品(Etanercept)では、抗体の体内動態制御に関わるFc受容体(FcRn)との結合親和性が異なり、FcRnとの結合親和性の違いがヒトでの血中半減期の相違に関連していることを明らかにした。この知見に基づき、FcRnとの結合親和性を規定する構造特性を明らかにするため、Infliximab, AdalimumabおよびEtanerceptをパパイン消化することによりFc領域を分離し、FcRn結合親和性を測定した。その結果、パパイン消化前には抗体医薬品と比較して低かったEtanerceptのFcRn結合親和性が、パパイン消化後は抗体医薬品に匹敵する程度に上昇することが分かった。したがって、これら医薬品のFcRn結合親和性の差異は、アロタイプの違いに起因するFc部分のアミノ酸配列やFc部分に結合している糖鎖構造の相違によるものではなく、Fabあるいは受容体部分の構造の影響により生じるFc領域の高次構造の違いにより生じていることが示された。本成果は、ヒトIgG1のFc領域を持つ既承認TNF阻害薬の血中半減期の相違を規定する構造特性に関する初めての知見である。
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