研究概要 |
本研究は,脊椎動物のボディプラン形成機構を考察するための格好の題材として,体節から中軸骨格が形成される機構,とくにその胸部を特徴づける肋骨の部域特異的形態形成機構を取り上げている.体節は,中軸組織(神経管,脊索),表皮,表皮+側板中胚葉にそれぞれ依存して発生する.例えば,表皮と体節との相互作用を遮断すると,肋骨は,椎骨の近くの部分のみ形成され,胸椎があたかも頸椎のような形態となる.本年度は,肋骨の相同部位が,実際に,頚椎や腰仙椎にあるのかを検討するため,頚椎や腰椎の肋骨突起の発生と,胸椎及び肋骨の発生を,その骨化点,関節形成,軟骨分化において比較した. 骨化点は椎体と椎弓に加え,胸部では肋骨に,頚椎では肋骨突起に見られた.胸部では関節形成に先立って細胞の凝集が見られたが,頚椎でも椎体と肋骨突起の間に同様の細胞凝集が一過性に見られた.頚部でも椎体と肋骨突起の間に関節が途中まで形成されると推測される. 骨化に先立つ軟骨形成をSox9の発現で検討した.肋骨突起や肋骨では,いずれも椎体や椎弓から離れた位置から軟骨分化が始まった.すなわち,肋骨突起も肋骨と同様,椎体や椎弓とは独立に軟骨分化していた. 以上の結果から,頚椎の肋骨突起が肋骨と相同であることが確認された.頚椎は肋骨の近位部のみが残っていると考えられるのである. 本研究の最終目的は,肋骨形成における表皮外胚葉-体節中胚葉間相互作用の実体を明らかにすることにある.今後,表皮外胚葉では分泌因子の候補となる因子を,体節側ではその受容体について,その時間的空間的発現パターンの変化を調べ,表皮と体節との間でどのような時空間配置における相互作用が存在するのか検討する予定である.
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