研究概要 |
本研究の目的は、ショウジョウバエをモデル生物として、平面内細胞極性(PCP, Planar Cell Polarity)を形成するシグナル伝達経路の中心に位置する細胞膜たんぱく質Frizzled-1(Fz-1)受容体に結合するリガンドを明らかにすることである。 Fz-1とリガンドとの結合を評価する方法に未だ確立されていないため、評価系が確立されているFrizzled-2(Fz-2)受容体の細胞内ドメインと、Fz-1の細胞外ドメインからなるキメラ受容体(Fz-1Fz-2キメラ受容体)を用いることにより、Fz-1とリガンドとの結合を、Fz-2からのシグナルとして評価することを試みた。 まず、ショウジョウバエS2培養細胞株において、Fz-1Fz-2キメラ受容体を過剰発現する細胞株、さらにコントロールとして、細胞外ドメインがFz-2、細胞内ドメインがFz-1から成るFz-2Fz-1キメラ受容体、またFz-1受容体のみ、Fz-2受容体のみをそれぞれ過剰発現する細胞株を樹立した。なお、それぞれの受容体の発現量は、Western blottingおよび細胞の免疫組織染色を用いて評価した。 次に、これらの細胞とWg蛋白質培養液中に分泌するS2細胞株(S2-HS-wg)とを共培養し、リガンド結合による細胞塊の形成実験を行ったところ、Fz-2受容体、Fz-1Fz-2キメラ受容体を発現する細胞株ではWgとの結合により細胞塊の形成が確認された。一方、Fz-1のみ、またはFz-1Fz-2キメラ受容体を発現する細胞は、ほとんど細胞塊を形成しなかった。 現在、Fz-1とリガンドとの結合をFz-2からのシグナルとして評価する方法として、TCFを介する転写活性の変化を測定するシステムについて検討を進めている。
|