前年度申請者がSix1ノックアウトホモマウスの解析を通じて発見・同定した嗅上皮発生初期に出現するパイオニアニューロンは、末梢神経系と中枢神経系が最初につながる場、すなわち上皮の一定の場所から軸索が最初に嗅球にむかって出て行く場を提供するものである。このパイオニアニューロンへの分化を司る遺伝子ネットワークの解明するために、Six^<-/->、野生型マウスの嗅上皮(鼻プラコード)の遺伝子発現を、アレイ解析にて比較する。胎生9.5日、数個体の鼻プラコードから取得したRNAを用いてアレイ解析を行った。スライドグラスからのRNAの取得とアレイ解析はタカラバイオに委託し、野生型とSix1^<-/->で発現に有意な差が観察される遺伝子について、in situ hybridization法で確認しつつある。現在までの知見から8のカテゴリーに分類した。を、野生型とSix^<-/->の胚で行い、Six1の標的遺伝子を同定する。#1.生殖腺発生に関与する遺伝子群#2.レチノイン酸の標的遺伝子群#3.神経移動・軸索伸張に関する遺伝子群#4.ケモカイン遺伝子#5.神経分化に関係する転写因子群#6.Six-Eya-Dach遺伝子ファミリー#7.細胞接着に関係する遺伝子#8.その他の遺伝子群、である。#8.のSocs2について海外の研究室から同遺伝子のノックアウトホモマウスの供与を受けパイオニアニューロンの有無を検索したところ、パイオニアニューロンの存在が確認された。また、#8.のロイシンリッチリピートを有する膜タンパク質については、間葉系に発現するもの、パイオニアニューロンに特異的に発現するものが見つかった。
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