研究概要 |
胚性内胚葉からは原始腸管を経て、肺、膵臓、肝臓、腸など疾患に深く関与する組織が形成される。本研究ではSox17欠損マウスに特異的に表現系の観察された胚性内胚葉分化について、派生組織への分化プロセスを検証することを目的として、培養法やノックアウトES細胞のキメラ解析を用いて検討を行った。Sox17遺伝子は申請者らが単離した遺伝子で、脊椎動物を通じて内胚葉特異的に発現し、その遺伝子欠損マウスも我々が作成し報告した。本点が独創性の一つであり、国内外で優位に実験を遂行することが出来た理由である。Sox17欠損胚はhead-hold stageまで正常に発生するものの、体節形成期には過度のアポトーシスにより分化が抑制され胚性致死である。膵臓原基(PDX-1陽性領域)が欠損することから、その腸管原基から肝臓、膵臓への分化について非常に興味深く、将来的に応用に発展する可能性を有する。しかしながら、そのプロセスをin vivoで観察することが不可能であった。そこで、9.5日胚から腸管原基を採取し組織培養する系を開発し、派生組織への形態形成を観察し、それぞれのマーカー(肝臓;Hnf4,膵臓;Pdx1,胆嚢;DBX)の発現を確認した。その結果、少なくとも胆嚢、胆管形成不全が起きることが観察された(in preparation).またCAG-EGFP(全身に緑の蛍光を発する胚)にSox17欠損ES細胞を挿入し、細胞の自律的分化能を観察した。以上の結果は発生・再生医療的見地からも幹細胞からの分化プロセスを理解するために重要な役割を担うと考えられる。
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