マウス網膜における脂肪酸結合蛋白(FABP)の発現局在を免疫組織化学により解析した結果、以下の新所見を得た。成熟網膜においては、脳型FABPは錐体型視細胞に、心臓型FABPは網膜介在細胞(アマクリン、双極、水平細胞)に、表皮型FABPは神経節細胞に、脂肪型FABPは内在性ミクログリアに局在した。FABPの分子多様性が網膜光受容機能において細胞多様性に関与することが示唆された。光照射刺激後の網膜変性過程で網膜外層に出現するマクロファージは表皮型FABPを発現し、内在性ミクログリアと分別同定が免疫組織化学的に可能なことが判明した。このことから、網膜ばかりでなく脳においても病的神経細胞死に引き続くグリア細胞反応過程における内在性ミクログリアと反応性外来性マクロファージとの分別同定がこれらの抗体を用いた免疫組織化学的解析で可能かどうかを精査する必要性が起こった。胎生期網膜においては、脳型FABPが網膜外層の多くの細胞に強く局在し、網膜最内層の神経節芽細胞の表皮型FABP発現は強かった。このことから、FABPさらには脂肪酸が成熟期よりも胎生期により重要な機能を担うことが推測される。一方、これまで我々が精査発表してきた免疫系におけるFABPの局在解析の延長として腸パイエル板におけるFABPの局在解析においても新所見を得た。即ち、表皮型FABPが上皮下ドームと濾胞および濾胞間領域の全てではなく多くの樹状細胞、更に芽中心内のマクロファージに発現局在した。加えてパイエル板を覆う上皮の主たる細胞であるM細胞にも特異的に表皮型FABPが発現局在することを見出した。
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