本研究では骨格筋細胞膜関連機能分子として1.細胞膜の補給・修復に関係する小胞輸送関連蛋白の解析、および2.細胞内細胞骨格と細胞膜裏打ちをつなぐ分子の一つであるβ-シネミンのノックアウトマウスの解析をおこなった。 1.骨格筋の小胞輸送関連蛋白については、その膜融合過程をコントロールしているSNARE複合体蛋白に着目し、その構成成分であるVAMP(Vesicle Associated Membrane Protein)について解析を進めている。平成21年度は以下の成果を得た。1)VAMP2については培養筋芽細胞株C2C12細胞の分化過程における出現を、分化マーカーMyf-5およびミオシン重鎖(MyHC)との関連で検討した。その結果VAMP2はMyf-5消失後で、MyHC出現後現れることが明らかになり、従来知られていた分化マーカーとは異なる挙動をしめすことが明らかになった。2)VAMP5については筋ジストロフィーモデルマウスにおける発現を免疫組織化学的に検討し、mdxマウスでは野生型マウスより発現が多いこと、小径の線維に比較的発現の多いことが明らかになった。 2.β-シネミンノックアウトマウスについては、メンデル比どおりに生まれ、ホモのノックアウトマウスにおいても発育は正常、組織所見でも筋の破壊再生像はみられず、血清CK値も正常、エバンス・ブルー注入試験でも筋線維内の染色はほとんど見られなかった。また、筋形質膜をcaveolin3で、Z盤をα-actininで免役染色した結果ではその分布に異常はみられなかった。今後、運動負荷試験後の骨格筋の変化の有無、mdxマウスとのダブルノックアウトマウスでの所見などを検討する予定である。
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