本研究では、コラーゲン線維の成熟過程と分解過程のメカニズムとそれに及ぼす影響因子について、原子間力顕微鏡(AFM)の特性を生かした液中形態観察により解明することを目指す。平成20年度は以下の内容の研究を実施した。 1)I型コラーゲン分子の分子束であるsegment-long-spacing (SLS) crystallitiesを作製し、電子顕微鏡による観察で確認後、AFM観察を行った。それによりSLS結晶の表面立体形状を観察することが可能になり、特徴的な縞状構造と微細構造との関係を示すことができた。また、この結晶の液中AFM観察の可能性も示した。 2)ラット尾腱由来のコラーゲン線維をAFMにより液中でイメージングをする上でのさまざまな測定条件の検討を行った。大気中では、柔らかいカンチレバー(ばね定数:0.08-0.5N/m)を用いればコラーゲン細線維の特徴的な縞状構造がコンタクトモードでも観察できたが、液中では線維の表面をひっかいてしまい良い像が得られなかった。しかし、液中ダイナミックモードでは、ばね定数が0.09N/mの短冊形カンチレバーで観察が可能であった。コラーゲン細線維のサブフィブリルやD周期の凹凸も、位相像で明瞭にその情報が得られた。さらに、高速AFMによる大気中、液中環境での観察を試み、リアルタイムでコラーゲン線維の微細形態変化をイメージングできる足がかりとなるデータを得た。 3)コラーゲン産生能の高い培養細胞(NOS-1)を走査型電子顕微鏡により観察し、この系によるコラーゲン線維形成の基礎データを得た。次年度は、AFMによりその過程を詳しく解析する予定である。
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