本研究では、コラーゲン線維の成熟過程と分解過程のメカニズムとそれに及ぼす影響因子について、原子間力顕微鏡(Atomlc Force Microscopy ; AFM)の特性を生かした液中形態観察により解明することを目指す。平成21年度は、以下の内容の研究を実施した。 1)骨肉腫由来の培養細胞(NOS-1)を培養開始後3日目、7日目に1%グルタルアルデヒド固定した。オスミウム酸とタンニン酸の処理後、臨界点乾燥と白金コーティングを施した標本を走査電子顕微鏡で観察した。3日目には両端が先細りした直径30nmのコラーゲン細線維が細胞周囲に見られ、D周期に対応する60-70nmの周期の凹凸も見られた。7日目には産生されるコラーゲン細線維はさらに伸張し、線維の分岐や集束も増加した。側方を接する線絶同士では、D周期に相当する凹凸が同期している様子も観察された。 2)NOS-1細胞を培養開始後7日目に1%グルタルアルデヒド固定し、オスミウム酸とタンニン酸の処理後、液中でAFM観察した。探針は、ばね定数が0.09N/mのSiN_2のV字型を使用し、ダイナミックモードで測定した。直径60nmから280nmまでのさまざまな太さのコラーゲン細線維が分岐し、集束する様子が見られ、その線維の表面にはD周期に対応する凹凸が明瞭に認められた。コラーゲン細線維の長軸方向に対して斜めに走る直径60nmの線維も見られた。同様に長軸に対して斜めに走行する周期的な溝も認められ、成熟していく過程で線維の一部が長軸に対しらせん方向に巻いていくことが示唆された。
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