顎下腺導管系分化におけるJunDとメニン、およびCREBの発現と局在:マウス顎下腺導管系の分化はアンドロゲン依存性であり、テストステロン投与により雌の線条部導管は顆粒性導管に転換する。転写因子AP-1複合体のメンバーであるJunDは、がん抑制遺伝子MEN1の産物であるメニンと結合することにより、主に細胞を分化させる方向に働く。またCyclic AMP response element-binding protein (CREB)は、さまざまなシグナル伝達系の下流でリン酸化により活性化して転写因子として働く。成熟マウス顎下腺において、JunDとメニン、およびCREBとリン酸化CREB(p-CREB)とも、免疫反応性は雄より雌の顎下腺で有意に高く、雌では介在部導管および線条部導管遠位部の細胞の核に局在したが、雄の顎下腺で導管系の大部分を占める顆粒性導管細胞の核には全く認められなかった。雄で精巣切除を行うといずれの因子も有意に発現量が増加し、雌や精巣切除した雄にテストステロンを連続投与すると減少した。このとき全CREBに対するp-CREBの割合は変化しなかった。またJunD、メニン、CREBとも、mRNAの量には性差がなく、テストステロン投与による変化もなかった。雌にテストステロンを1回投与すると、線条部導管近位部の細胞の核において投与後1〜6時間でCREBとp-CREB、また6〜24時間でJunDとメニンの発現が一過性に増加し、投与後48時間で線条部導管細胞が顆粒性導管細胞に分化するとともにいずれも消失した。これらの結果から、アンドロゲンによる顆粒性導管細胞の分化において、核でのJunD-メニン複合体やCREBの蛋白量の一過性の増加およびその後の消失が関与することが示された。
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