本研究では、新たな遺伝子導入ツールとしてのTo12トランスポゾンベクターを応用して、効率の良い新たな遺伝子導入マウス作製法の開発や、ES細胞なども含む培養細胞を用いた概日時計の分子メカニズムの新たな研究法の構築等をを目的とした研究である。 本年度はまず、蛍光タンパク質をレポータとして使用し、このレポーターをTo12ベクターに組み込んで脳内にトランスポゾン転移酵素の発現ベクターとともに注入し、脳内における蛍光タンパク質の発現を調べた。その結果、脳内で蛍光タンパク質の発現を確認したため、このTo12ベクターを用いて本格的に遺伝子導入マウスの作製を開始した。現在、To12トランスポゾンによってゲノム上にレポーター遺伝子が挿入されたことが確認できるマウスの系統が複数得られ、遺伝子導入マウスの作製効率も従来のものより良い結果を得ている。さらに今後、視交叉上核の局所ネットワークを解析できる方法論を構築する。 また、概日リズムをモニターするホタルルシフェラーゼレポーターを組み込んだTo12ベクターを、ES細胞に導入することに成功した。これまで、ウイルスベクター以外の方法では、ES細胞に簡便に高効率に遺伝子を安定導入する方法はなかったが、今回、ES細胞へTo12ベクターを用いて概日リズムをモニターするレポーターを安定遺伝子導入することに成功し、極めて簡便にES細胞およびES細胞由来の組織の概日時計を解析できる方法に道筋をつけることができた。
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