研究概要 |
本研究課題では、Tol2トランスポゾンを新たな遺伝子導入ツールとして利用して、様々な生命現象の解明に役立てるための基盤研究を目的としている。 今年度は、前年度から研究を進めていたベクターの構築とその応用として、細胞の概日時計をモニターできるレポーターベクターをTol2を用いて作製し、様々な初代培養細胞の概日時計振動をリアルタイム解析することに成功した(Yagita et al, BMC Biotechnology,2010)。時計遺伝子BmallおよびDbp遺伝子のプロモーターの下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ発光レポーターを、Tol2トランスポゾンベクターにのせ、トランスポゾン転移酵素発現プラスミドとともに細胞に導入すると、これまでウイルスベクター以外では極めて困難であった、初代培養細胞にも簡便に安定遺伝子導入ができるようになった。 さらに、昨年度より取り組んでいた研究として、概日時計の発生過程の解析がある。この課題についてもTol2トランスポゾンを利用したレポーターベクターを応用して、1)ES細胞には体細胞にあるような概日時計振動が見られないこと、2)分化誘導培養することで概日時計が形成されること、3)分化した細胞を再度未分化なiPS細胞にすると再び概日時計振動がなくなること、を明らかにし、PNAS誌に発表した(Yagita et al, PNAS, 2010)。この成果は、日経新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日刊工業新聞、日経産業新聞、その他地方紙など多数の新聞に取り上げられた。 また、Tol2トランスポゾンベクターを用いた効率的なトランスジェニックマウス作製法の確立を目指し、国立遺伝学研究所川上浩一教授および隅山健太博士とともに研究を推進しているところである。
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