本研究は、ω3脂肪酸の細胞内動態を制御する分子としての脳型脂肪酸結合タンパク(Brain-type Fatty Acid Binding Protein: B-FABP)に注目し、サイトカイン産生や個体レベルでの免疫反応における役割を明確にすることを目的としている。 平成20年度は、FABP7が肝線維化で果たす役割を解明するために、野生型マウス(WTマウス)およびFABP7ノックアウトマウス(KOマウス)に四塩化炭素を投与によって肝線維症モデルマウスを作成し、両者の形態を比較検討した。投与28日後には膠原線維の増生量はWTマウスに多く蓄積していた。筋線維芽細胞の増生量とTGF-βの発現量をWTマウスとFABP7KOマウス間で比較したところ、筋線維芽細胞の増生量は投与4日後に正常マウスにおいてより増生し、TGF-βのmRNA発現量は投与2日後にWTマウスにおいてより発現が増強していた。以上の結果より、FABP7は肝線維化に重要な分子であることが示唆された。 また、リンパ節T細胞領域の線維芽細胞にFABP7が発現していることを共焦点レーザー走査顕微鏡で確認した。Flow Cytometryを用いて、FABP7KOマウスとWTマウスの腸間膜リンパ節におけるT細胞の差異を解析したところ、KOマウスでは、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の割合がWTマウスより多かった。RT-PCRを用いて、KOマウスとWTマウスの腸間膜リンパ節における、IL-7の発現量を解析したところ、KOマウスの腸間膜リンパ節がIL-7を多く発現している可能性があった。 これらの結果を別記学会で報告するとともに、肥満細胞におけるFABPの局在と機能についての研究に共同研究者として参画し別記論文を発表した。
|