研究概要 |
各組織の上皮・内皮細胞には複数のclaudin(タイト結合膜蛋白)が発現しており、それらのclaudinの組み合わせと比率により、その組織のタイト結合(TJ)の構造と機能が決定されると考えられている。我々が確立したマウス大腸癌由来のCMT93-Iおよび-II細胞は、claudin-4,-6,-7,-12を発現していた。CMT93-II細胞はさらにclaudin-2を発現し、細胞間電気抵抗値(TER)はCMT93-1細胞の約7分の1であった。CMT93-II細胞におけるclaudin-2の発現は、ERK, phosphatidylinositol-3kinase, protein kinase Cのシグナル伝達経路阻害剤で抑制され、TERは上昇した。したがって、細胞間透過性は、claudin-2の発現で亢進すると考えられた。claudin fmilyには細胞外第一ループ(ECL1)にW-GLW-C-C motifという保存されたアミノ酸配列があり、マウスのclaudin-1では保存されたCysは、54番目と64番目にある。この54番目と64番目のCysの一方または両方をAlaに置換したものをC54A,C64A,C54&64Aとする。これらの変異体のN末端にEGFPを付与して発現ベクターを構築し、タイト結合を形成しないHEK293細胞で、これらを安定に発現する細胞株を確立した。EGFP-C54A, EGFP-C64A, EGFP-C54&64Aを発現するHEK293細胞をレーザー顕微鏡で観察すると、これらは細胞膜に局在し、タイト結合裏打ち蛋白ZO-1と共存した。しかし、freeze fracture法による観察では、現在までにタイト結合ストランドは認められていない。このことから、claudin-1のECL1にある2つのCysのうち少なくとも1つをAlaに置換すると、claudin-1のタイト結合ストランド形戌能が阻害されことがわかった。
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