研究概要 |
タイト結合膜蛋白claudinは24の分子種から成るファミリーを形成する。各組織の上皮・内皮細胞には複数のclaudin分子種が発現しており、それらの組み合わせと比率により、その組織のタイト結合の形態と機能が決定されると考えられている。claudinファミリー蛋白の細胞外第一ループには保存された2つのCys残基がある。claudin-1の54番目と64番目のCysの一方または両方をAlaに置換し、そのN末端にEGFPを付与したものをEGFP-C54A,EGFP-C64A,EGFP-C54&64Aとして発現ベクターを構築した。これらをタイト結合を形成しないHEK293細胞で発現して解析したところ、これらの変異により細胞膜への輸送は正常であるが、タイト結合ストランドの形成が起こらないことがわかった。次に、これらの変異体をタイト結合を形成するMDCK II細胞で発現して解析した。EGFP-C54AとEGFP-C64Aは側面膜に局在したがタイト結合領域には局在しなかった。一方、EGFP-C54&64Aはタイト結合領域にのみ局在した。細胞間電気抵抗はEGFP-C54Aで有意に上昇し、それ以外の変異体では変化がなかった。MDCK II細胞に内因性に発現するclaudin-1,-2,-3,-4,-7の蛋白量は、EGFP-C54Aの発現でほとんど変化しなかった。EGFP-C54Aは、タイト結合を形成せず、内因性claudinの蛋白発現量も変化させないで細胞間透過性を低下させることがわかった。これは、新たな細胞間透過性制御のメカニズムを示唆している。
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