研究概要 |
タイト結合膜蛋白claudinは27の分子種から成るファミリーを形成する。各組織の上皮・内皮細胞には複数のclaudin分子種が発現しており、それらの組み合わせと比率により、その組織のタイト結合の形態と機能が決定されると考えられている。マウス大腸癌由来のCMT93-Iおよび-II細胞は、claudin-4,-6,-7,-12を発現する。CMT93-II細胞はさらにclaudin-2を発現し、細胞間電気抵抗値(TER)はCMT93-I細胞の約7分の1であった。CMT93-II細胞におけるclaudin-2の発現は、ERK,phosphatidylinositol-3 kinase,protein kinase Cのシグナル伝達経路阻害剤で抑制され、TERは上昇した。したがって、細胞間透過性はclaudin-2の発現で亢進することがわかり、タイト結合の機能が発現するclaudinの組み合わせに依存することがわかった。また、claudinファミリー蛋白の細胞外第一ループには保存された2つのCys残基がある。claudin-1の54番目と64番目のCysの一方または両方をAlaに置換し、そのN末端にEGFPを付与したEGFP-C54A,EGFP-C64A,EGFP-C54&64Aを、タイト結合を形成しないHEK293細胞で発現して解析したところ、すべてが細胞膜へ輸送されるもののタイト結合ストランドが形成されないことがわかった。次にこれらの変異体をタイト結合を形成するMDCK II細胞で発現して解析した。EGFP-C54&64Aはタイト結合領域に局在したが、EGFP-C54AとEGFP-C64Aは側面膜に局在し、タイト結合領域には局在しなかった。TERはEGFP-C54Aで有意に上昇し、それ以外の変異体では変化がなかった。4 kDa FITC-dextranのfluxはすべての変異体で変化がなかった。MDCK II細胞に内因性に発現するclaudin-1,-2,-3,-4,-7の蛋白量は、EGFP-C54Aの発現でほとんど変化しなかった。以上の結果から、claudin-1の細胞外第一ループで保存されたシステイン残基はタイト結合ストランドの形成に必須であることがわかった。EGFP-C54AはTERを増加させるがfluxには影響しないことから、両者は別の制御を受けていると考えられる。TERの変化は、EGFP-C54Aの発現による内因性claudinsの発現の変化によるものではないことはわかったが、そのメカニズムは不明である。
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