1. ラット過労モデル下垂体中間葉melanotrophの細胞変性過程の検討 細胞の変性過程におこる細胞内小器官の形態学的変化の詳細な観察を行った。これまで電顕像や免疫組織染色によって小胞体やゴルジ体に形態学的変化が起こることがわかっていたが、それぞれの小器官の変化が、どのように関連しているのかわかっていなかった。より詳細な観察により、細胞変性は小胞体ストレスが起点となって進行し、最終的に細胞死に進行するまでの経時的変化がわかってきた。これらの知見は、細胞死の過程を明確にするだけでなく、細胞変性に関連する分子を見いだす上で重要な手がかりとなる。 2. ラットmelanotroph培養系を用いた細胞死誘導 前年度、重要な関連分子としてピックアップした小胞体ストレスマーカー分子は、転写因子として細胞死防御に働く分子の発現を抑制するとされている。培養系melanotrophにこの分子を強制発現させ細胞の変化を観察したが、この分子の発現のみでは、疲労ラットにみられる細胞変性を引き起こすことはできなかった。この分子は、細胞変性の起点となる重要な分子と考えられるが、その役割や別の分子の関与についてさらなる検討が必要と考えられた。 3. マウス過労モデルを用いた分子メカニズムの検討 ラットモデルでは5日間の疲労負荷を与えるのに対し、マウスモデルでは3日間が限界である。マウスモデルのmelanotrophは小胞体ストレスに陥るが、細胞死には至らなかった。しかしながら、上述の小胞体ストレスマーカー分子のノックアウトマウスに3日間の負荷を与えると、melanotrophのゴルジ体に野生株マウスとは明らかに異なる変化が認められた。このことは、melanotrophにおけるこの分子の機能と細胞変性における役割を知る上で、良いモデルとして活用できるものと考えられた。
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