研究概要 |
これまで適当なプローベが無かったためlive cell imagingが充分になされてこなかったcAMPに着目して,工藤佳久氏が新規開発したcAMP感受性蛍光試薬(溶液中のcAMP測定に使うのが主目的の試薬)を、生きた細胞内でもイメージングに使用できないかどうかを検討するのが本研究の目的であった。試薬の蛍光特性に合致したフィルターを作製し、単離細胞標本と組織標本でcAMPイメージングをおこなった。マスト細胞では細胞内Ca^<2+>が上昇する刺激(Compound 48/80,ATP)で明瞭な蛍光変化を認めたものの、培養細胞(Hela細胞)、腺房細胞、あるいは血管平滑筋細胞でははっきりとした変化をみとめなかった。今回は、AKMLysとAKMOrnの2種類のプローブを用意したが、AKMOrnはレーザー照射による減光が著しかったことから、細胞負荷後に充分な蛍光量を発するAKMLysを用いて実験を進めた。実験の結果、1)ヒスタミン刺激によるcAMPの上昇が確認されているポジティブコントロールの細胞では変化が認められないこと、2)マスト細胞の顆粒基質は多種の色素と結合して蛍光を発することがある、および3)マスト細胞で蛍光特性が変化した箇所を高精細で観察すると顆粒状に見えること、などから、マスト細胞で得られた所見は、cAMPの上昇を引き起こしたものというよりは顆粒基質に蛍光色素が結合したためにおきた人工産物的な現象と推察される。cAMPイメージングそのものは成功したとは言い難いが、このぷろジェクトを遂行するにあたって行われた高速レーザー顕微鏡のブラッシュアップにより、副次的にCa^<2+>イメージングの研究は成果を上げた。
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