LEA-DP/Sendaiラット(以下、Sendaiラット)はLong Evans Agouti (LEA)ラットコロニーから糖尿病を発症する個体を基に確立された非肥満型2型糖尿病モデル動物である。インスリン分泌低下を主因にするヒト2型糖尿病の優れたモデルと考えられている。今年度本研究では、糖尿病の発症に伴うSendaiラットの角膜における形態変化について免疫組織化学的に検討した。 6、10、14週齢のいずれの週齢においても角膜上皮基底膜付近にトルイジンブルーに濃染する沈着物が観察された。またこの沈着物は週齢が進むにつれて量が増加した。電子顕微鏡で観察したところ、この沈着物は円形ないし楕円形をなし、上皮基底細胞内、上皮基底細胞と基底膜との間、あるいは基底膜近くの角膜固有質に認められた。これら沈着物の存在する部位の上皮基底細胞では多くの場合、空胞変性ならびに基底膜の剥離や多層化などの形態変化が観察された。分析電顕による解析より、この沈着物はリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムの結晶であることが明らかになった。さらに細胞外マトリックスの構成成分(IV、 VI、 VIII型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン)に対する抗体を用いて免疫電顕にて局在を検討した。VI型コラーゲン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは主に固有質に反応が認められた、またVIII型コラーゲンはデスメ膜に反応が認められた。しかしVI、 VIII型コラーゲン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの局在並びに発現に変化は認められなかった。これに対して、基底膜の形態変化に伴い、基底膜の構成成分であるラミニン、IV型コラーゲンの局在および発現が変化することが明らかになった。
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