研究概要 |
糖尿病の発症により基底膜に形態変化が起ることがよく知られている。今年度は、インスリン非依存性糖尿病モデル動物(GKラット)を用いて、糖尿病角膜症に伴い、基底膜の形態がどのように変化するか、その基底膜の分子構築変化を免疫組織化学的に検討し、さらに糖尿病治療薬投与によりこの形態変化が回復するかについて検討した。 まず電子顕微鏡にて形態を観察したところ、糖尿病GKラット角膜では、角膜上皮基底細胞におけるヘミデスモゾームの減少並びに上皮基底細胞からの基底膜の剥離が観察された。またGKラットでは角膜内皮側の基底膜(デスメ膜)においてlong spacing collagenが正常な角膜に比べて、加齢に伴い顕著に増加することが観察された。次ぎに免疫組織染色により細胞外マトリックスの構成成分(I、III、IV、VI、VIII型コラーゲン、ラミニン、フィプロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン)の発現を調べた。その結果、VIII型コラーゲンの発現の増加とラミニンの発現の減少が観察された。さらにコロイド金法ならびにHRP法を用いた免疫電顕により、VIII型コラーゲンが正常なラットの角膜ではデスメ膜全体にほぼ均一に分布するのに対し、GKラットでは特にlong spacing collagenに局在していることが明らかになった。以上の形態変化は糖尿病治療薬(nateglinide, glibenclamide)投与により有意に回復することが明らかになった。これらのことから基底膜の分子構築の変化が糖尿病角膜症の原因の一つになっていることが推測された。
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