研究概要 |
近年,膜ドメインを利用して細胞内に侵入するウイルス報告例が増えている.本研究の全体構想は,『多重蛍光標識ウイルスプローブ』を作製し,膜ドメインの新たな機能を探ることを目的とする.全体構想における本研究の位置づけは,ウイルスを載せたラフトの,カベオラやタイトジャンクションへの"走化性"的滑走現象の詳細を明らかにし,ウイルス侵入に利用されるカベオラ膜輸送の詳細を明らかにすることにある.このうち,平成21年度は,多重蛍光標識ウイルスプローブの作製を継続するとともに,タイムラプスイメージング手法により,ウイルスレセプター分子のカベオラへの滑走を生細胞にて解析できた.詳細は以下の通り. 1.多重蛍光標識ウイルスプローブの作製 (1)N-proteinに蛍光タグをつけたウイルスの作製がとても困難であることが判明した.おそらくウイルスのパッケージングがうまくいかないと考えられる.次年度は,異なる方法にて多重蛍光標識ウイルスの作製を試みる. (2)M-proteinに対するペプチド抗体の作製を開始した. 2.細胞膜ドメインの滑走機構を解析 生細胞においてCD13を抗体にて架橋し,その動態を解析した結果,CD13の動態には以下の特徴があることが判明した.(1)細胞膜上に散在していたCD13は,やがてクラスターを形成すること.(2)そのクラスター過程において,CD13は方向性を持った流れがあること.(3)形成されたクラスターの中には,安定し動かないものと,クラスターごと移動するものがあること.(4)クラスター同士が合流しさらに大きなクラスターになるものが存在すること.(5)クラスター形成部位があらかじめ決まっているかのように,あらかじめ細胞膜上に"クラスター区画"が存在する可能性があること.これらの結果から,細胞骨格系とCD13の動態がリンクしている可能性が示唆された.
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