近年、膜ドメインを利用して細胞内に侵入するウイルス報告例が増えている。本研究の全体構想は、『多重蛍光標識ウイルスプローブ』を作製し、膜ドメインの新たな機能を探ることを目的とする。全体構想における本研究の位置づけは、ウイルスを載せたラフトの、カベオラやタイトジャンクションへの“走化性”的滑走現象の詳細を明らかにし、ウイルス侵入に利用されるカベオラ膜輸送の詳細を明らかにすることにある。平成22年度は、多重蛍光標識ウイルスプローブの作製を継続するとともに、タイムラプスイメージング手法により、ウイルスレセプター分子の細胞膜上滑走現象を解析した。詳細は以下の通り。 1. 多重蛍光標識ウイルスプローブの作製 (1) M-proteinに対するペプチド抗体を作製し、使用できることが確認出来た。 (2) N-protein、 S-proteinに蛍光タグをつけるとウイルス産生効率が格段に落ちてしまうことが判明した。構造タンパク質以外(エンベロープ、核酸など)にタグを付ける方法を検討した方が良さそうである。 2. 細胞膜ドメインの滑走機構を解析 生細胞においてCD13を抗体にて架橋し、その動態を解析した結果、CD13の動態には以下の特徴があることが判明した。(1)細胞膜上に散在していたCD13は、やがてクラスターを形成すること。(2)そのクラスター過程において、CD13は方向性を持った流れがあること。(3)このクラスタリング過程は、細胞骨格系と関連する可能性が高いこと。以上の結果から、細胞骨格系とラフト分子のクラスタリング動態が関連している可能性が示唆された。
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