アポトーシスにおける核の凝縮は、形態学的にも研究者によって統一的な見解が得られていなかった。それはこれまで核の凝縮の同調性が悪く、また同一の核を追跡してその形態学的変化を捉えた研究が皆無であったからである。我々は、これまでに、cell-freeアポトーシスの手法と微速度映画を用いて、アポトーシスにおける核の凝縮過程がリング形成、ネックレス、最終の3ステップをたどることを確定し、そのうち2〜3分で生じるリング構造を引き起こす因子(リング形成因子)が、アポトーシス細胞の抽出物からヘパリンアガロースによるアフィニティーカラムによって高濃度に精製できることを見出している。 今年度はヒト白血病細胞Jurkat並びにニワトリヘパトーマ細胞CHEPからヘパリンアガロースおよび限外濾過法によってリング形成因子を部分精製し、各分画を単離した核にかけたところ、分子量30K〜50Kの分画に強い活性があることを見出した。このことは、リング形成がある種のイオンや低分子によるアーティファクトであることを完全に否定する結果でもある。しかし、1次元SDS電気泳動によって多数のバンドを認めたので、質量分析計による蛋白の同定には至っていない。更なる大量培養による試料の大量取得と精製が必要である。
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