研究課題
アポトーシスにおける核の凝縮は、形態学的にも研究者によって統一的な見解が得られていなかった。それはこれまで核の凝縮の同調性が悪く、また同一の核を追跡してその形態学的変化を捉えた研究が皆無であったからである。我々は、これまでにcell-freeアポトーシスの手法と微速度映画を用いて、アポトーシスにおける核の凝縮過程がリング形成、ネックレス、最終の3ステップをたどることを発見し、そのうち2~3分で生じるリング構造を引き起こす因子(リング形成因子)が、アポトーシス細胞の抽出物からヘパリンアガロースによるアフィニティーカラムによって高濃度に精製できることを見出している。この因子をヒト白血病細胞Jurkatからヘパリンアガロースおよび限外濾過法によって部分精製し、分子量30K~50Kの分画に強い活性があることを明らかにした。このことは、リング形成がある種のイオンや低分子によるアーティファクトであることを完全に否定する結果でもある。21年度は硫安分画法などで部分精製したが、同定には至っていない。また、この活性によって核蛋白のリン酸化が起きることは確かめたが、p38並びにJNKキナーゼに対する阻害剤では、cell-freeの核凝縮はまったく阻害できなかった。両酵素以外のキナーゼが働いていると考えられる。
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