研究課題
ラットにモノクロタリンを皮下注すると、4週後には約25%が心不全のため死亡し、生き残ったラットは右室の肥大と右心不全を呈した。この生存ラット右室より摘出した心室筋が、不全心筋としての特性を全て備えていることを、我々は既に報告している。この不全ラットと対照ラットの右室から多細胞心室筋(トラベクラ)を摘出し、両トラベクラにおけるトロポニンCからの解離カルシウム量の違いとその機序を検討した。更に、トラベクラを1%Triton X-100で30分間潅流することにより除膜した。(1) トロポニンIのリン酸化の検定、カルシウム-張力関係の解明対照ラット右室から摘出したトラベクラを除膜し、サルコメア長2.0と2.2μmにおけるカルシウム張力関係を記録した。EC_60は、サルコメア長2.2μmにおいて減少しており、トロポニンCのカルシウムに対する親和性の増大が示唆された。0.1μMイソプロテレノールの投与により、EC_50は有意に増大し、トロポニンIのリン酸化によってトロポニンCのカルシウムに対する親和性の減少が示唆された。(2) トロポニンCからの解離カルシウムの解明不全ラット右室から摘出したトラベクラにおいては、対照ラットに比べ、伝播するカルシウム波が有意に速く、トロポニンCからの解離カルシウムの増加が示唆された。不全心筋ではトロポニンIのリン酸化によって、トロポニンCのカルシウムに対する親和性が減少すると考えられるため、今後はその機序に関して検討していく必要がある。
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