1.新規に発見したブタカルシトニン受容体刺激ペプチド(pCRSP-1)を用いた実験結果およびその遺伝子座の観点から、ヒトおよびラットでは、βCGRPが脳内カルシトニン受容体の内因性リガンドと考えている。今回ラットβCGRPをラット脳室内に投与し、中枢生理作用を評価した。実際にはCRSPスーパーファミリーに属するペプチド(ラットカルシトニン、ラットαCGRP、ラットβGRP)の脳室内投与を行い、体温変化、夜間摂餌、昼間絶食後摂餌を評価した。 2.上記のペプチド脳室内投与によりラットの体温上昇がみられた。その作用強度、作用時間ともにβCGRP>αCGRP>カルシトニンの順でみられた。この生理作用がカルシトニン受容体を介したものであることを明らかにする目的でカルシトニン受容体アンタゴニストを前投与した後にこれらのペプチドを投与したが、作用の減弱はみられず、カルシトニン受容体を介した体温上昇作用であることを明らかにできなかった。 3.摂食に関しては上記のペプチド脳室内投与により暗期、明期ともに摂食抑制作用がβCGRP>αCGRP>カルシトニンの順でみられた。特に暗期ではペプチド間の作用強度の違いが顕著となった。また体温上昇作用と異なり、カルシトニン受容体アンタゴニストの前投与で、摂食抑制作用は減弱し、この作用がカルシトニン受容体を介したものであることが示唆された。 4.これまでαCGRPについては生理作用が報告されていたが、βCGRPは生理作用が報告されておらず、一般的には生理作用はないとされていた。しかし、今回の我々の実験結果からβCGRPにはαCGRPよりも強い生理作用があることが明らかになり、βCGRPが、ヒトおよびラットの脳内カルシトニン受容体の内因性リガンドである可能性が強まった。
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