研究概要 |
電位依存性プロトンチャネル(H+チャネル)を流れる定常H+電流量の温度依存性は、イオン透過過程と開口可能なチャネル(active channel)数に対する2重の影響によって決定される。私達はマイクログリアを用いてイオン透過過程を分離することに成功し、そのQ_<10>値(温度が10℃上昇すると電流が何倍になるかを表す)自身が温度によって変化することを明らかにした(J. Gen. Physiol., 2009)。Q_<10>値を温度(T)に対してプロットした透過過程のQ_<10>-T曲線は細胞条件に寄らず一定であった。そこで、「実測される定常H+電流量のQ_<10>-T曲線が透過過程の曲線と一致すれば、active channel数の温度による変化は無い」と仮定した。定常H+電流量のQ_<10>-T曲線は細胞によって異なり、high Q_<10>相に対応する30℃以下ではイオン透過過程の曲線から大きく乖離する場合も多かった。H+チャネルのリクルートメントの要因のひとつとなるアクチン細胞骨格再構成を阻害するphalloidinやcytochalsin Dで細胞を処理すると、この乖離が減少した。以上の結果から、単一チャネル電流の測定が困難なH+チャネルにおいてQ_<10>-T法はリクルートメントの評価法として有用であることがわかり、現在これを用いてコレステロール添加/除去によるラフト動態がリクルートメントに関与するかどうかを検討している。また、細胞膜に空胞型V-ATPase(H+ポンプ)とH+チャネルが共存する破骨細胞において、V-ATPaseに比べH+チャネルのリクルートメントにおけるendocytosis/exocytosisの関与は小さいとの予備実験結果を得たので、Q_<10>-T法を適用し検討する予定である。
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