研究課題
平成20年度は、畿央大学学内の生理学実験室の整備を行なった。また、当初の研究計画では海外共同研究者の米国マウントサイナイ医科大学のHajjar教授(研究協力者)から提供される筋小胞体のカルシウムポンプ(SERCA2a)遺伝子を組み込んだE1領域欠損アデノウィルスベクターを用いる予定であったが、最近、Hajjar教授はSERCA2a遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを開発したので、このAAVベクターを用いて本研究を遂行することに研究計画を変更した。変更理由は、次の3点である。1)アデノウィルスは、炎症反応を惹起する可能性があるが、このSERCA2a AAVベクターは病原性がない。2)アデノウィルスベクターの宿主での発現期間は1週間程度であるのに対して、SERCA2a AAVベクターは宿主染色体DNAに組み込まれるため長期間(数か月以上)SERCA2a遺伝子を発現できる。このため、SERCA2a遺伝子治療の効果を長期間に亘って調べることが可能になった。3)心臓への遺伝子導入の際に、アデノウィルスベクターでは開胸手術し心臓への注射を行ったが、AAVベクターでは外科手術を必要とせず、ラット尾静脈からAAVベクターを注入することにより、非侵襲的に心臓にSERCA2a遺伝子を導入できた。本研究のためのSERCA2a AAVベクターの分与については、昨年秋にHajjar教授から承諾を得た。予備実験として、大動脈弓狭窄誘発性心不全モデルラットにおいて大動脈弓狭窄期間と心機能(機械的機能とエネルギー学的機能)との関連について調べてみた結果、機械的機能とエネルギー学的機能の両面からみた不全心を引き起こすためには、大動脈弓狭窄期間は半年以上必要であることが判明した。以上より、本研究では半年間の大動脈弓狭窄より作製した心不全モデルラットにSERCA2a AAVベクターを導入することで、心機能と運動パフォーマンスの改善を試みる。
すべて 2008
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Journal of the American College of Cardiology 51
ページ: 1112-1119
Journal of Molecular and Cellular Cardiology 45
ページ: 270-280