研究課題/領域番号 |
20590218
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡田 泰昌 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (80160688)
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研究分担者 |
越久 仁敏 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20252512)
三分一 史和 統計数理研究所, モデリング研究系, 准教授 (30360647)
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キーワード | 呼吸調節 / 呼吸神経回路網 / 脊髄 / 頚髄 / 横隔神経核 / 呼吸リズム形成 / 呼吸パターン形成 / 膜電位イメージング |
研究概要 |
頚髄呼吸神経回路網は、中枢性呼吸調節において重要な役割を果たしているが、その機能と形態の全容は解明されていなかった。そこで、本研究では、以下の解析を行った。 新生ラット摘出脳幹脊髄標本における頚髄呼吸神経活動について、膜電位感受性色素を用いた光計測による解析を行った。頚髄横隔神経核内とその周辺における呼吸神経活動の計測を行い、同部には時空間活動様式が異なる2つの呼吸神経細胞群が存在し、それらは横隔膜および斜角筋を支配することを明らかにした。さらに、横隔神経核領域の解剖学的構築とその発達に伴う変化を明らかにした。 摘出脳幹脊髄標本では新生動物しか対象にすることができないため、成熟ラットにおける頚髄呼吸神経活動を計測するため、経動脈灌流脳幹脊髄標本を用いた。オピオイド受容体刺激薬は、疼痛や呼吸困難感を軽減する医薬品として重要であるが、呼吸抑制という重大な副作用を有する。本研究では、オピオイド受容体刺激薬DAMGOに注目し、その横隔神経出力に対する効果を解析し、若齢成熟ラットでは、新生ラットの場合と異なり、DAMGOは横隔神経出力への抑制作用が少ないことを明らかにした。 本研究により、頚髄内の横隔神経核および同核周辺の呼吸神経細胞群について機能と形態を明らかにするとともに、横隔神経出力に対するオピオイド受容体刺激薬の新しい薬理作用を見出した。この成果は、発展が期待される脊髄再生研究に対し基礎的知見を提供するとともに、中枢性呼吸調節異常が関与する多くの疾患の病態理解および呼吸抑制の少ないオピオイド系新規医薬品の開発に貢献すると期待される。
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