本研究の目的は、マウス胚性幹(ES)細胞由来心筋細胞の分化成熟過程における分岐構造を解析することにより発生過程における心筋自動能発現制御の力学的メカニズムを解明することであった。本研究では、まず電気生理学的実験データを基にマウスES細胞由来心筋細胞の非線形力学系モデル(洞結節型・心房筋型・心室筋型)を作成した。これらモデル細胞システムの分岐構造(自動能発現・停止過程での安定性とダイナミクス)を理論的に解析することにより、ES細胞由来心筋細胞の分化成熟過程における自動能発現・消失は非線形システムに生じる分岐現象であること、分岐の出現には形質膜イオンチャネル電流と細胞内Ca^<2+>動態が関与していることを明らかにした。
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