研究課題
G蛋白質はGα、GβおよびGγからなるヘテロ三量体であるがGβとGγは挙動をともにする。受容体刺激により(1)GαとGβγは解離することが知られており、(2)受容体とGα、あるいは、(3)受容体とGβγが会合すると考えられる。これらの挙動は、それぞれの蛋白質に蛍光蛋白を付加しそのFRET効率を測定することにより観察可能であると考え研究を行った。当初は、「代謝型グルタミン酸受容体のG蛋白質を活性化作用」を中心に据えて研究を進めたが、細胞レベルのFRETでさえも上記の組み合わせすべてでpositiveな結果を得ることが出来なかった。これを20年度に報告したが、21年度は、これらnegativeな結果が受容体に起因するのか、それとも実験系(手法や蛍光蛋白の挿入部位など)に起因するのかを明らかにするため、他の受容体や蛍光蛋白の挿入部位も複数試した。その結果、Gαqの機能をレポートする蛍光蛋白の挿入部位を見出すことが出来た。また、野生型mGluR1では(1)GαとGβγの解離が認められないこと、ロドプシンタイプの受容体でも(2)受容体とGαの会合は検出が難しいこと、β受容体とGβγの会合はロドプシンタイプの受容体で再現性良く検出できることが明らかとなった。以上の結果は、代謝型グルタミン酸受容体とロドプシンタイプの受容体ではG蛋白質活性化機構に差異があることを示唆するものである。さらに、受容体刺激停止時からの回復過程において(1)GαqとGβγの再会合速度と(3)受容体とGβγの解離速度に差がある可能性を見いだした。同様な結果を他のグループが昨年報告しており、G蛋白質活性化機構の詳細を検討するのに重要な知見である。今後は、一分子観察により(1)GαqとGβγの再会合および(3)受容体とGβγの解離についての詳細な速度論的解析に取り組む予定である。
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Journal of Biological Chemistry 285
ページ: 10291-10299
Structural rearrangement and functional relation of the metabotropic glutamate receptor. in Handbook of Neurochemistry and Molecular Neurobiology.3rd Edition(Springer)
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