蛋白質はGα、GβおよびGγからなるヘテロ三量体であるがGβとGγは挙動をともにする。受容体刺激により(1)GαとGβγは解離することが知られており、(2)受容体とGα、あるいは、(3)受容体とGβγが会合すると考えられる。これらの挙動は、それぞれの蛋白質に蛍光蛋白を付加しそのFRET効率を測定することにより観察可能であると考え研究を行った。当初は、「代謝型グルタミン酸受容体のG蛋白質を活性化作用」を中心に据えて研究を進めたが、細胞膜レベルのFRETでさえも上記の組み合わせすべてでpositiveな結果を得ることが出来なかったため、平成22年度においては、ムスカリン受容体やプリン受容体なども用いて研究を進めた。その結果、リガンドによるFRET変化を示し、かつ、Gq蛋白質と機能的に会合するムスカリン受容体1型のFRETコンストラクトを見出した。受容体のFRETコンストラクトでは、一般的に、細胞内ループに蛍光蛋白質を導入する。蛍光蛋白質の大きさゆえに、受容体のG蛋白質会合作用は消失するというのが一般的な理解である。本研究により見出された機能的FRETコンストラクトを用いることで、Gq蛋白質共発現下のリガンド依存性FRET変化の亢進を新たに見出した。これは、リガンドにより活性化状態にあると考えられる受容体が、さらにG蛋白質と会合することで新たな活性化状態、あるいはより安定な活性化状態に推移することを意味するものと考えられる。生きた細胞を用いて、受容体の構造変化に関わる情報を経時的・可逆的に記録できたという点で重要な結果を持つものと考えられる。また、冒頭に述べた(2)受容体とGα、(3)受容体とGβγの会合についてもFRETにて観察することが可能となった。現在、これらのデータを解析し、論文として発表できるようまとめているところである。
|