研究概要 |
本研究は、傍細胞輸送がどのような駆動力で維持されるのか、またどのような細胞内信号で制御されるかを明らかにすることを目的とし摘出血管灌流ラット顎下腺を用い実験した。平成20年度に実施した内容は、1)コントロール刺激としてカルバコールを行い、これに対し種々の刺激薬が、灌流液から唾液中への色素移行(細胞内を通過しない蛍光色素Lucifer Yellow,mw=520を用いた)と水分分泌をどのように変化させるかを評価した。その結果、大きい分子を通過させる経路と小さい分子を通過させる経路の制御が異なる漢方薬を見いだした。2)灌流顎下腺の動脈側と静脈側に酸素電極を設置し、酸素消費を測定した。酸素消費は色素分泌とほぼ並行して増減し、ウアバインに感受性があることから、刺激時に傍細胞輸送系が活性化され優位になるが、劣勢な経細胞輸送機構に依存している可能性が高いことが、示唆された。3)灌流動脈圧を計測する測定系を立ち上げた。組織重量1gあたり10ml/minの流速で血管灌流を行うと、約120-160mmHgの流入圧であるが、カルバコールで刺激すると100mmHgまで低下し刺激中は一定値を保った。流速を6ml/minから25ml/minの間で変化させると80-250mmHgの間で流入圧が変化した。流速と流入圧の関係から、流路抵抗を計算するとカルバコール刺激時に流路抵抗が低下していた。一定流速の血管灌流唾液腺で初めての知見である。また流速を増加させると、唾液分泌速度も増加した。これは流速を上昇させると組織圧が上昇し傍細胞経路輸送の駆動力になったことを示唆するが、さらなる実験が必要である。4)連携研究者/海外の研究協力者と共同研究を進め、タイト結合の凍結割断標本観察/SEM観察、細胞内Ca測定、傍細胞輸送の静水圧による駆動の可能性を検討した。
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