研究概要 |
本研究は、傍細胞輸送がどのような駆動力で維持されるのか、またいかなる細胞内信号で制御されるかを明らかにするため、摘出血管灌流ラット顎下腺を用い実験した。平成21年度に実施した内容は、1)灌流動脈圧を計測する測定系により、流速を6ml/minから25ml/minの間で変化させ、80-250mmHgの間で流入圧が線形的に変化することを測定し、流速と流入圧の関係から入力抵抗とゼロフローでの圧力(毛細管圧)を求めた。種々のカルバコール濃度に対して入力抵抗は用量依存的に減少したが、ゼロフロー抵抗は一定であった。このデータを基に分泌刺激中に流速を変化させることで静水圧が変化することになる。この静水圧変化は唾液分泌速度を変化させた。灌流圧に応じて、水分泌も蛍光マーカー(細胞内を通過しないLucifer Yellow, mw=520)分泌も変化し、傍細胞輸送の駆動力に静水圧が寄与することが判明した。2)灌流液から唾液中への色素移行とCaの関係を種々の分泌刺激薬で調べた。その結果、傍細胞輸送はCa依存性であることが判明した。3)ムスカリン受容体刺激でNOが産生され血管抵抗が低下し血流を増加させる機構が提示されていた。L-NAME=0.3mMを与えると圧は140mmHgから180mmHgに上昇したが、CChにより111±9mmHgに低下し,L-NAMEがない場合の103±5mmHgに対し有意差はなく、分泌刺激中の動脈圧はNOには依存しないことが判明した。4)連携研究者/海外の研究協力者と共同研究を進め、タイト結合の凍結割断標本観察/SEM観察、細胞内Ca測定、傍細胞輸送の静水圧による駆動の可能性を検討した。5)国内国際学会で成果を発表した。
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