研究概要 |
研究期間全体のworking hypothesis“1Gと異なる重力環境下では,前庭-血圧反射の可塑性が起こり,起立性低血圧を引き起こす"を証明するため,本年度は以下の研究を行った。 ・2Gの環境で誕生・生育した10週齢のラットの前庭-血圧反射を測定して,通常の1G環境下で誕生・生育したラットのそれと比較した。 ・被験者実験で前庭-血圧反射を急性に遮断する方法としてgalvanic vestibular stimulation (GVS)の有用性を検討した。 ・GVSにより前庭-血圧反射を遮断して,起立時における前庭-血圧反射の役割をヒトにおいて調べた。 これらの研究により,以下の点が明らかになった。 ・2G環境で育ったラットは,前庭-血圧反射の調節力が低下し,重力変化に伴う血圧応答が小さくなる。また,前庭系を介する協調運動も阻害される。 ・前庭-血圧反射の変化は,1G環境で1週間飼育することにより元に戻るが,協調運動阻害は,1G環境に戻しても回復しない。 ・GVSにより前庭-血圧反射を非侵襲的・可逆的に阻害することができる。 ・ヒトの起立時の血圧調節に前庭-血圧反射が重要な役割を果たしている。日常の活動が低下している高齢者では,前庭-血圧反射が働かず,起立時に血圧が低下する。
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