研究概要 |
PRIP1ノックアウトマウスと野生型の行動解析をオープンフィールドテストを用いて行った。ノックアウトマウスは野生型に比べ新環境下における探索行動が有意に減少し不安様行動の増加が見られた。このことから、扁桃体におけるGABA抑制の変化により行動変化が起きている可能性が示唆される。次にこの現象を細胞レベルで検討するため、扁桃体を含む脳スライスを用いてホールセルパッチクランプ法による解析を行った。グルタミン酸作動性興奮性シナプスカレント(mEPSC)GABA作動性抑制性シナプスカレント(mIPSC)を解析したところ、頻度、振幅ともに違いは見られなかった。一方、GABA_A受容体阻害薬であるbicucullin methiodideにより観察されるTonic GABAergic currentが野生型に比ベノックアウトでは有意に減少していた。さらにGABAトランスポーター阻害薬NO711によるGABAの再取り込み阻害により増加するTonic GABAergic currentおよび抗不安薬diazepamにより増加するTonic GABAergic currentは野生型に比べノックアウトでは有意に減少していた。このことからPRIP1ノックアウトマウスの扁桃体ニューロンでは持続的なGABA作動性シナプス伝達(tonic GABAergic inhibition)が野生型に比べ有意に減少しており、不安様行動との関係が示唆された。 今後、これらの差を引き起こす分子機構を明らかにするため、shingle-cell PCR法によりGABA_A受容体サブユニット発現の違いを検討する予定である。さらに卵巣切除雌マウスを用い, ステロイドホルモンと不安の関係を検討する。
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