1.閉経前・後の中年女性における精神性ストレス時の血管反応におけるVitamin Cの経口投与の影響 H21年度に引き続き、閉経前・後の中年女性10名(各5名)を対象に、酸化ストレス抑制効果のあるVitamin Cを実験前5日間の経口投与後にカラーワードテスト(CWT)による精神性ストレス負荷を行なった。対象として、非投与下でも同様の実験を行なった。閉経前・後の女性ともに、CWTによる血圧・心拍数増加反応にはVitamin C非投与と投与の間に差は見られなかった。一方、閉経後女性では、Vitamin Cの投与後にCWTによる上腕動脈内径の減少が抑制され、一酸化窒素代謝物の血中濃度の上昇が見られた。しかし、閉経前女性では、このVitamin Cによる効果は認められなかった。以上より閉経後女性のCWTによる上腕動脈内径減少には酸化ストレスの関与が示唆された。 2.閉経モデルラットの精神性ストレスによる昇圧反応におけるアンジオテンシンII/NADPHオキシダーゼ系を介した酸化ストレスの関与とエストロゲン作用 成熟雌ラットを卵巣摘出後、プラセボ群とエストロゲン補充群の2群(各群8匹)に分けた。17週齢でテレメトリーシステムを用いてケージ交換ストレスを負荷したが、血圧、心拍数上昇反応はプラセボ群よりエストロゲン補充群では抑制された。3日間のNADPHオキシダーゼ阻害薬(Apocynin)の経口前投与下では、エストロゲンの心拍数上昇反応抑制効果が消失し、AngiotensinタイプI受容体拮抗薬(Losartan)の前投与下では、拡張期血圧の抑制効果が消失した。また、ストレス負荷による血漿レニン活性の上昇はエストロゲン補充により抑制された。一方、アンジオテンシンIIの静脈内投与による昇圧反応にはエストロゲン補充の効果は見られなかった。以上の結果より、エストロゲンは、精神性ストレス時にNADPHオキシダーゼ系を介してストレスによる心拍数上昇反応を抑制し、AngiotensinタイプI受容体に作用するAngiotensin IIを減少させることによって、昇圧反応を抑制することが示唆された。
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