研究課題
海馬はエピソード記憶の形成に中心的な脳領域である。本研究では海馬学習のメカニズムを探るため、4~5週齢のラットを実験に用い、IA taskによる学習課題を負荷した。in vivo microdialysis法により、自由行動状態での海馬体内ACh分泌動態を検討したところ、学習依存的な海馬体内ACh分泌反応が約60分間記録された。一方、何も課題を負荷していないラットではACh分泌反応は見られなかった。さらに、Shockのみを負荷した群や、新規環境の提示を行ったWalking群でもACh分泌反応が見られたが、反応は小さく、30分以内に反応は消失した。学習成立後、海馬急性スライスを作成しCA1錐体細胞のパッチクランプ解析を行い、Schaffer線維を電気刺激した際のevoked EPSCを記録し、AMPA/NMDA比を求めた。IA学習が成立した群と、taskは行わずcontextの提示なしにshockのみを加えた群、IA taskを行わないコントロール群で比較し、海馬学習が内在性AMPA受容体のシナプス移行をもたらし、AMPA/NMDA比を上昇させることを確認した。Recombinant virus (Herpes GluR1-GFP)をラット海馬に注入し、海馬CA1錐体細胞でGluR1サブユニットを含むAMPA受容体がシナプス移行を確認した。IA学習が成立したラットではGluR1サブユニットを含むAMPA受容体のシナプス移行が見られる一方、学習課題を行っていないコントロールや、contextの提示なしに電気ショックのみを負荷したコントロールではAMPA受容体のシナプス移行が見られないことから、GluR1のシナプス移行は学習依存的であることが確認された。これら実験ではScopolamineを投与によりAMPA受容体のシナプス移行が阻害されたことから、ムスカリン受容体を介し、AChがGluR1サブユニットをシナプス移行させることが示された。
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