1.小腸における糖輸送担体遺伝子発現の日内リズム形成におけるヒストンコードの役割:12時間ごとの明暗サイクルの条件下で飼料を自由に摂取させたマウスから空腸を採取し、糖輸送担体Sglt 1遺伝子上のヒストンH3およびH4のアセチル化の日内変動を、アセチル化ヒストンH3、 H4抗体を用いてChIPアッセイによって解析したところ、Sglt 1遺伝子上のヒストンのアセチル化レベルの変動は、いずれのヒストンの場合も、プロモータ領域よりもむしろ転写領域に強くみられ、その日内変動は転写開始近傍領域へのRNAポリメラーゼIIおよびBMAL 1の結合量の日内変動と対応していた。Sglt 1遺伝子転写領域におけるヒストンアセチル化酵素集積促進因子Brd4ならびにmRNA伸長困子P-TEFb (Cdk9)の結合は、いずれもヒストンのアセチル化と対応した日内変動を示した。給餌を明期に制限すると、給餌のタイミングにあわせて、Sglt1遺伝子転写領域におけるヒストンH3およびH4のアセチル化の日内変動の位相が12時間シフトした。それゆえ、小腸におけるSglt 1遺伝子発現の日内リズムは、食事のリズムに依存しており、そのリズムの発振には、ヒストンコードによるヒストンの化学修飾とmRNA伸長反応の促進が関与していることが示唆された。 2 小腸と脂肪組織における時計遺伝子発振系制御因子の比較:時計遺伝子のコアループを形成するBMAL1の遺伝子発現は、マウスの空腸と脂肪組織のいずれでも、5倍以上の振幅で日内変動しており、その位相は両組織で一致していた。BMAL 1の遺伝子発現に関与することが想定される核内受容体の中で、空腸ではROR α、 ROR β、 ROR γ、 REV-ERB αの発現量が著しい日内変動を示し、その位相は食事のリズムに依存してシフトした。一方、脂肪組織では、REV-EIB αの発現が著しい日内変動を示した。
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