PrRP遺伝子欠損動物は成熟後に肥満となる。この時、野生型に比較し、摂食量が増加している。このデータは、PrRPニューロンが摂食抑制作用を持つことを示している。PrRPニューロンは延髄弧東路核、延髄腹外側部、視床下部背内側核の3ヶ所に存在する。どのPrRPニューロンが摂食抑制作用を持つのか不明であった。そこでまず、摂食すると、脳のどの部位のPrRPニューロンが活性化されるかを明らかにする目的で、Fosタンパク質とpCREBの発現を検討した。摂食することで延髄腹外側部のPrRPニューロンは、Fosタンパク質の発現が僅かに上昇したがpCREBの発現は有意には変化しなかった。視床下部背内側部においてはFosタンパク質とpCREBの発現は共に有意には変化しなかった。これに対し、延髄弧束路核のPrRPニューロンは、Fosタンパク質とpCREBの発現が摂食することにより大きく増加した。したがて、摂食時に、主に延髄弧束路核のPrRPニューロンが主に働くことが示唆された。次に、PrRPのエネルギー消費に対する影響を検討した。PrRP遺伝子欠損動物においては基礎値における酸素消費量に有意な差は観察されなかった。従って、内因性のPrRPは基礎状態におけるエネルギー消費にはあまり重要な働きをしていないことが示唆された。次に、PrRPの不安行動に対する影響を観察した。PrRPを脳室内に投与すると、オープンフィールドテスト、高架十字迷路テストにおいて、不安行動の減弱が観察された。このデータは、PrRPは抗不安作用を持っていることを示唆している。
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