研究概要 |
平成20年度は脂肪細胞に作用して血管内皮細胞の抗血栓性を増強させる作用を有する食物成分を特定することを目標として研究を実施した。血管内皮細胞の抗血栓性は血管内皮細胞が有する凝固活性と線溶活性とのバランスによって決定される。黒豆種皮や黒豆の色素主成分であるCyanidin-3-O-glucoside (C3G)の生理作用として,抗酸化作用、抗炎症作用、がん予防、脳機能改善作用,視覚改善とロドプシンの再合成効果などが報告されている。しかし血栓症予防,特に線溶系因子への効果についての報告は少ないことから、C3Gの抗血栓作用について検討を行った。C3G、そのものには線溶活性は認められず、線溶系酵素の増強作用も認められなかった。培養血管内皮細胞を24穴の培養プレートでコンフルエントになるまで培養した後、C3Gで刺激したところ培養液中u-PA活性量の増加とu-PAおよびt-PA mRNA量の増加が認められた。一方、線溶系酵素抑制因子のPAI-1 mRNA発現量に有意な変化は認められなかった。次に、培養血管内皮細胞をトロンビンで刺激し、過凝固状態におけるC3Gの効果を検討した。培養血管内皮細胞のトロンビン刺激により培養液中のu-PA活性は低下したが、培養血管内皮細胞をあらかじめC3Gで前処置しておくことによりu-PA活性の低下は抑制された。また、トロンビン刺激によりPAI-1 mRNA発現量は増加したが、C3G前処理によりその増加は抑制されていた。よって、C3G前処置による効果はPAI-1発現量の低下により誘導されたと考えられた。現在、CSGを初めとする食物成分あるいは抽出物の脂肪細胞に対する作用をPAI-1などのアディポサイトカインの分泌変化から解析中である。
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