研究概要 |
脂肪細胞が分泌するアディポサイトカインの中で、動脈硬化進展後の血栓形成に深く関わる線溶系因子に着目した。また、食品試料として、海藻由来の粘性成分である多糖類を用いた。マウス由来3T3-L1脂肪前駆細胞をdexamethasone(DEX), isobutyl-methylxanthine(IBMX)、インスリンおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM培地で脂肪細胞に分化させた。脂肪細胞への分化誘導後、2日目に食品試料を1%含む分化維持培地(インスリンと10%のFBSを含むDMEM培地)で脂肪細胞を培養した。脂肪細胞の培養8日目目に培養液を採取し、培養液中に存在する線溶系活性化因子のtissue-type plasminogen activator(t-PA)とurokinase-type plasminogen activator(u-PA)の活性をfibrin-enzymographyにて評価した。その結果、蒸留水を分化維持培地に1%加えた場合のコントロールに比べて、食品試料を加えて培養した時の培養液中t-PA活性およびu-PA活性はともに有意に増強していた。一方、脂肪細胞から分泌されるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)はt-PAやu-PAの活性を抑制することから、血栓の形成を促進する。しかし、今回の実験では、培養液中のPAI-1活性量に有意差は認められなかった。以上より、海藻由来の多糖類成分は脂肪細胞に作用して、血栓形成を阻止することが示唆された。 マウス大動脈の組織片から遊離してくる細胞を分離・調整した。抗マウス平滑筋由来アクチン抗体を用いたWestern blot法にて、この細胞は平滑筋細胞であることを確認した。得られた培養血管平滑筋細胞の培養液をfibrin-enzymographyで解析したところ、t-PAとu-PAの活性が確認された。今後は脂肪細胞と血管平滑筋細胞との相互作用に対する食物成分の影響について解析を行う。
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