内臓肥満は動脈硬化症の進展要因として注目されており、動脈硬化症の発症、進展には血管平滑筋細胞の内膜への遊走・内膜での増殖が関わっている。そこで本研究では脂肪細胞と血管平滑筋細胞に着目し、脂肪細胞の分化に伴う油滴蓄積量の変化と血管平滑筋細胞の遊走能との関係を明らかにするとともに、脂肪細胞の油滴蓄積に影響する食品成分、および脂肪細胞存在下における血管平滑筋細胞の遊走能を抑制して動脈硬化症の進展を制御し得る食品成分について検討を行った。 3T3-L1脂肪前駆細胞の分化維持培地に黒豆の種皮色素であるアントシアニンのcyanidin-3-glucoside(C3G)を添加したところ、コントロールと比較して油滴畜性量の減少が認められ、アディポネクチン分泌量の増加と、plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)活性量の低下が認められた。次に、脂肪細胞存在下における血管平滑筋細胞の遊走能を検討するために、二槽培養法を応用した実験方法を確立した。すなわち、下樽に、3T3-L1脂肪前駆細胞から油滴を蓄積する脂肪細胞へと分化させた各分化段階の脂肪細胞を播種し、上槽にマウス由来の血管平滑筋細胞を播種した。上槽に血管平滑筋細胞を播種した4時間後に上槽の底面に存在するポアサイズ8μmのメンブレン孔を通過した血管平滑筋細胞の数を計測して、血管平滑筋細胞の遊走能を評価した。その結果、C3Gは血管平滑筋細胞の遊走を抑制することが明らかとなった。これらの結果より、C3Gは脂肪細胞への油滴蓄積を抑制して脂肪細胞の肥大化を抑制するだけではなく、動脈硬化症の進展も抑制する可能性が示唆された。
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