研究概要 |
中脳腹側部のドーパミン細胞付近の破壊により不眠を、さらに中脳-橋境界部の破壊が睡眠時の筋緊張の亢進を観察した。また、パーキンソン病患者の視床下部オレキシンニューロンの形態変化、臨床検査データとしての脳脊髄液中のオレキシン・神経伝達物質を併せて検討した。 1)ラットを用いた睡眠実験 (1)睡眠段階記録下にダイアリシスサンプルを用いてアミノ酸の測定を行った。黒質での睡眠段階によるGABAの変動は観測されなかった。黒質緻密部と網様部ではGABA終末の分布にも違いがあるので、さらに例数を増やし組織検索をもとにデータの再検討が必要である。 (2)睡眠段階記録下にマイクロダイアリシスプローブを介してGABAのアゴニスト、アンタゴニストおよびオレキシンとオレキシンアンタゴニストを目標部位に投与、睡眠段階の変化、筋活動の変化、異常行動を調べた。オレキシンの投与により覚醒の減少とGABAアゴニストおよびアンタゴニスト投与により用量依存性に睡眠量が減少および増加した。睡眠時行動異常に関連するのは黒質部よりもやや背外側部に強いようでさらに検討している。 2)臨床検体でのパーキンソン病とオレキシンとの関係の研究 各種疾患患者の脊髄液サンプル中のオレキシン量とヒスタミン量を測定した。 脊髄液オレキシン量とパーキンソン病重症度の間に負の相関が予想されたが、現在集まった症例では強い相関は見られていない。ヒスタミン分析からオレキシン低下が見られるナルコレプシーだけでなく、オレキシンレベルの比較的高い突発性過眠症でもヒスタミンレベルが下がっている事がわかった。この結果から過眠症状とより強く関連するのがヒスタミンである事が示唆され、パーキンソンでもヒスタミン量と,視床下部ヒスタミン細胞の保全を調べる必要性が示唆されて検討中である。 パーキンソン病患者の組織検討はUCLAと共同で進めておりパーキンソン病症状の重症度とオレキシン細胞数に負の相関が見られている。
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